みなさん、こんにちは。先日、ロシアの外交関係者と話をする機会がありました。とても日本の事情に詳しい人物です。そのときに、こんなことを言われました。
「もしも今、ロシアと日本の間に平和条約があったとしたら、日本は大変だったでしょう。米国に言われて、ロシアに制裁しなければならない。だけどそれだと条約違反になってしまう。頭が痛いことになっていました」
とても奇妙な発言です。確かにロシアがウクライナ侵略を始めた際、日本は速やかに対ロ制裁に踏みきりました。先日の岸田文雄首相訪米の際に、バイデン米大統領はこれを高く評価しました。
- 中国の覇権主義的動き 日米首脳を動かす 安保・経済で連携強化
しかし、仮に日本がロシアと平和条約を結んでいたとしても、侵略行為を批判するのは至極あたりまえで、とやかく言われる筋合いはないはずです。
実はこの外交関係者の発言の背景には、日ロ平和条約を巡る、日本とロシアの根本的な見解の相違があるのです。
まず、日本の考え方を整理しておきましょう。
第2次世界大戦が終わって80年が経とうとしているのに、日本とロシア(終戦時はソ連でした)は、まだ平和条約を結んでいません。その原因は、両国間の領土問題が解決していないためです。
日本は、現在ロシアが実効支配している択捉、国後、歯舞、色丹の四島を「北方領土」と称して、返還を要求しています。
日本政府は公式には認めていませんが、安倍晋三元首相は2018年11月、4島返還を断念して、歯舞、色丹の2島の引き渡しだけを求めるという譲歩案に転じ、プーチン大統領に示しました。
ニュースレター[駒木明義と読むロシアから見える世界] 登録はこちら
ロシア情勢が専門の駒木明義論説委員が書き下ろす「駒木明義と読むロシアから見える世界」は、有料会員限定で隔週水曜にメールで配信します。
日本とは異なるロシアの主張
4島か2島かはともかく、領…