未曽有の原発事故から半年後の2011年9月2日。福島県浪江町は全町避難を強いられていた。「ここに帰ってこられるのか?」。現在、町の介護福祉課長を勤める松本幸夫さん(53)は疑問に思った。最新の放射線量を調べるために、町内に入った時、小学校の校庭を牛が疾走していた。
東京電力福島第一原発から北に約8キロ。立ち入りが制限される「警戒区域」となった浪江東中学校の校庭は、すでに雑草が覆っていた。ただ、原発からの距離の割に、放射線量は他の地域より低い毎時0.50マイクロシーベルトだった。
5年半後、町の面積の2割で避難指示が解除された。その1年後、旧警戒区域の浪江東中の敷地に、震災後は町唯一の小中学校となる「なみえ創成小中学校」が開校した。校庭は除染され、人工芝の緑が映える。校舎は元の形のまま改修された。
小学生8人、中学生2人のス…