熊野信仰を全国津々浦々に広めるうえで大きな役割を果たした「熊野聖」「熊野比丘尼」と呼ばれる男女の行者。その系譜を引く人たちが、明治以降も活動を続けていた――。世界遺産に登録された「紀伊山地の霊場と参詣道(さんけいみち)」の信仰を下支えし、伝えてきた人たちの足跡をたどる地道な研究を紹介する。
大阪府富田林市の在野の歴史研究者、玉城幸男さん(78)は「女性の西国巡礼三十三度行者―尼サンドについて―」と題する書籍を1993年に自費出版した。
玉城さんは、和歌山市粟にある金剛寺に保存されていた尼僧、中村了昔(りょうせき)(1865~1941)の一代記を発掘。「尼サンド」と呼ばれた女性の西国巡礼行者の一人だった了昔尼の生涯をたどり、その姿を明らかにした。尼サンドの語源は、三十三度を略した「三度」という。
西国三十三所巡礼とは、「観…