「子どものことを何でも親に押しつける社会で、子どもが増えるはずがない」。青森県立中央病院成育科部長の網塚貴介さんは、そう話す。小児医療の現場で日々、障害児や医療的ケア児、その家族と向き合いながら感じる「少子化対策の課題」を聞いた。

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診療中の網塚貴介さん=青森市の青森県立中央病院、網塚さん提供

 ――2024年の出生数は、初めて70万人割れになる見通しとなりました。

 驚きはありません。政府は「異次元の少子化対策」と言いながら、子どものことで親が困っていても、まったく助けてくれません。

 いまの少子化対策は、障害や病気など、子どもに関するさまざまな「困りごと」をまったく想定していないように感じます。

  • 2024年出生数は70万人割れ、過去最少更新見通し 朝日新聞推計

 ――「異次元の少子化対策」を盛り込んだ政府の「こども未来戦略」には、障害のある子どもや医療的ケアが必要な子ども、家庭に対し「きめ細かい対応を行う」などと書かれています。

 実態は伴っていないと思います。

 こども家庭庁は障害児施策を管轄するようになりましたが、自治体レベルでは「育児支援」と「障害児支援」を管轄する部署が分かれ、少子化対策に障害に関する記述が何もないケースもみられます。

 少子化対策と言ったときに、不妊治療の支援、医療費の無料化など、いろいろ出てきます。それはそれで必要かもしれませんが、いまの少子化対策で根本的にまちがっていると思うのは、子育てするうえでの「困りごと」に何も応えようとしないしくみです。

 ――具体的に、困りごとに対応してもらえないケースとは?

 例えば、早産で小さく生まれ…

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