井本直歩子さん=東京・築地、小林正明撮影

 日本スポーツ協会(JSPO)は3月、加盟団体における女性の役員参画状況の調査結果を発表しました。中央競技団体では2007年度の調査開始から初めて、女性理事の割合が30%を超えました。この調査をJSPOと担った、「アスリートが社会課題解決のためのリーダーに」を掲げて活動する一般社団法人「SDGs in Sports」代表で、元競泳五輪代表の井本直歩子さん(47)に、「30%達成」の意味と調査結果から浮かぶ課題について尋ねました。

 ――中央競技団体における女性理事の割合は東京五輪・パラリンピック後も減ることなく、30.2%に。40%以上達成も68団体中、16団体ありました。

 やはり、「女性理事40%以上」と定めた19年のスポーツ庁のガバナンスコード(組織統治規定)が大きいです。適合性審査の対象であり、かなりプレッシャーになっている。今後は達成していないと、助成金獲得にも影響が出てきます。いろいろな団体が女性を多く登用しようと必死に考えていると思います。

きっかけは「森発言」

 女性リーダーの実態調査は、ずっとしたかったのです。

 21年2月、いわゆる「森発言」(東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長=当時=が「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかる」と発言)があり、組織委に設けられたジェンダー平等推進チームのアドバイザーに私が就いたのが翌3月でした。

 その年、多くの団体で理事の改選があり、女性理事が何%になったという報道が出てきました。内閣府は07年度から女性役員の割合の調査結果を公表しており、全加盟団体が回答している。ただ、その詳細な結果は中央統括団体からも発表されることなく、スポーツ団体でシェアもされていなかった。

 それで、調査しているならきちんと分析して、公表しようよと。

 公表して共有し、うまくいっている団体の実践や、いっていない団体の悩みなどをタスクフォース(作業部会)にしてみんなで話し、回答した団体やその団体に加盟する人たちの役に立つようにフィードバックすることによって、より前進できると思いました。

 今回調査した23年度の結果に、JSPOが過去2年間分のデータも出してくださり、より厚みのある分析ができました。おかげで、「女性の数は増えたよね、次の課題は」と、議論する材料ができました。

写真・図版
新型コロナの感染拡大を受け、アテネ在住だった井本直歩子さんが、東京五輪の聖火引き継ぎ式で日本側を代表して聖火を受け取った。手にしたランタンには聖火がともる=2020年3月19日、アテネ・パナシナイコスタジアム

 ――ガバナンスコードは中央競技団体向けです。

 地方の都道府県スポーツ協会などは、ガバナンスコードが未達成でもペナルティーもありません。中央団体の多くはメンバーシップの選考基準に「地方枠」があり、地方団体で会長などが選出されない限り、中央団体でもこの先割合を上げていくのがすごく難しいのではないかと言われています。

 地方の協会の女性役員の比率は低く、今回の調査でも17.4%でした。その中から中央団体の理事に、となると女性はどうしても少なくなる。地方にはそもそも、女性がスポーツ団体の役員にほとんどおらず、そこからどうやって改革していくのか、時間がかかります。

 40%を達成したり、30%以上になったりしている団体は結構、地方枠を取り払っています。思い切って地方枠を外し、外部理事などを登用して、何としてもまずは女性理事を40%にと、取り組んでいる団体の方が達成しやすくなっています。

日本バドミントン協会が示す改革モデル

 ――ガバナンスコードには「外部理事25%以上」もあります。外部登用で女性の割合が増えても、その競技やアスリート出身の方が理事になりにくくなるのでは。

 組織の重要な優先事項を解決…

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