北アルプスのふもと、長野県安曇野市に日本一開放的と呼ばれる少年院「有明高原寮」がある。施設には外と隔てる塀や、窓を覆う鉄格子はない。かつて司法保護団体が少年保護施設として運営を始め、法務省が管理する今でも塀がない当時の状態が受け継がれている。開かれた環境のもとで約半年間、詐欺や傷害などの罪を犯した14~20歳の少年たちは規律を順守した教育を受ける。
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朝、2列になって走る少年たちに、グラウンドの外から手を振る女性の姿があった。
「大きな声を出して頑張っている姿を見ていると、元気をもらえるんです」
女性の自宅からは、フェンス越しに寮のグラウンドを見渡すことができる。朝7時、少年たちの点呼が聞こえたら庭に出るのが日課だ。
うれしかった地域住民の言葉
「中」と「外」を隔てる壁がない寮は、地域の人との関わりも大切にしてきた。1949年の創立以降、地元・宮城地区と盆踊りや運動会、防災訓練など年間行事の約半分を合同で開催している。
昨年8月、地域住民を招いて開かれた納涼祭。太鼓をたたく少年(19)は住民と顔を合わせたあと照れ笑いを浮かべた。
「太鼓かっこよかったよ」
2週間前から練習に取り組み、猛暑の中で設営をして迎えた当日。自分の過去に関係なく、地域住民がかけてくれた言葉がうれしかった。
「優しく声をかけてくれて、泣きそうになった。達成感や喜びを感じたのは初めて」
夜、その日の思いを日記につづった。
「一緒にいられるなら、悪い人でもよかった」
少年は過去に逮捕監禁容疑で…