地域と合同で開催された納涼祭。盆踊りで太鼓をたたく少年に笑いかける住民の姿があった=2024年8月1日午後、長野県安曇野市、有元愛美子撮影

 北アルプスのふもと、長野県安曇野市に日本一開放的と呼ばれる少年院「有明高原寮」がある。施設には外と隔てる塀や、窓を覆う鉄格子はない。かつて司法保護団体が少年保護施設として運営を始め、法務省が管理する今でも塀がない当時の状態が受け継がれている。開かれた環境のもとで約半年間、詐欺や傷害などの罪を犯した14~20歳の少年たちは規律を順守した教育を受ける。

  • 「少年刑務所」ってどんなところ?記者が訪ねてみた
  • 刑務所で迎えた2度目の誕生日 21歳受刑者を変えた教官との日記

 朝、2列になって走る少年たちに、グラウンドの外から手を振る女性の姿があった。

 「大きな声を出して頑張っている姿を見ていると、元気をもらえるんです」

 女性の自宅からは、フェンス越しに寮のグラウンドを見渡すことができる。朝7時、少年たちの点呼が聞こえたら庭に出るのが日課だ。

うれしかった地域住民の言葉

 「中」と「外」を隔てる壁がない寮は、地域の人との関わりも大切にしてきた。1949年の創立以降、地元・宮城地区と盆踊りや運動会、防災訓練など年間行事の約半分を合同で開催している。

 昨年8月、地域住民を招いて開かれた納涼祭。太鼓をたたく少年(19)は住民と顔を合わせたあと照れ笑いを浮かべた。

 「太鼓かっこよかったよ」

 2週間前から練習に取り組み、猛暑の中で設営をして迎えた当日。自分の過去に関係なく、地域住民がかけてくれた言葉がうれしかった。

 「優しく声をかけてくれて、泣きそうになった。達成感や喜びを感じたのは初めて」

 夜、その日の思いを日記につづった。

「一緒にいられるなら、悪い人でもよかった」

 少年は過去に逮捕監禁容疑で…

共有
Exit mobile version