歯を食いしばってバーベルを持ち上げる中島一馨さん=2024年4月15日、石川県珠洲市、白井伸洋撮影

 能登半島地震で、大きな被害を受けた石川県珠洲市。4カ月が経っても、倒壊した家や傾いた電柱がそのまま残るこの場所から、世界を狙う社会人アスリートがいる。女子重量挙げ競技選手の中島一馨さん(22)。生まれも育ちも珠洲市の彼女は、コーチと二人三脚、2028年に米・ロサンゼルスで開かれるオリンピックへの出場を目指し、一歩ずつ前へと進んでいる。

 春の暖かな日差しが差し込む、珠洲市の健民体育館に隣接する「珠洲市ウエイトリフティング場」。

 中島選手は気持ちを静めるように呼吸を整えると、歯を食いしばって全身にグッと力を込め、100キロ近いバーベルを頭上高く持ち上げた。

 「よし、いいよいいよ。はい、もう一丁」

 静かな場内に、浅田久美コーチ(60)の声だけが響く。この日も約2時間、いつものように2人だけの練習が続いた。

 中島さんの重量挙げとの出会いは小学校5年生のとき。父に連れられて、珠洲市にある元オリンピックの代表監督だった浅田さんが開く重量挙げの教室にやってきた。

写真・図版
珠洲の練習拠点の壁には、五輪に向けた横断幕が掲げられ、その下には重量挙げクラブチーム生のことが取り上げられた新聞記事などが張り出されていた=2024年4月15日、石川県珠洲市、白井伸洋撮影

 中島さんには、重量挙げとい…

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