写真・図版
プロジェクトでつくられる「地雷原のハチミツ」=プロジェクトのホームページから
  • 写真・図版

 地雷原をハチミツの生産場所に――。そんなプロジェクトが、ロシアによる侵攻を受けているウクライナで進んでいる。

 プロジェクトは、地雷などで汚染された土地にドローン(無人機)を活用して蜜源植物の種をまいて植え付け、その蜜をミツバチに集めさせるというもの。巣箱は地雷除去区域に沿って配置され、ミツバチは巣箱から半径約3キロ離れた場所でも蜜を集めることができるため、危険で人が立ち入れない場所も含めたエリアを活用できるとしている。

 広大な土地があり、ヒマワリなどの蜜源植物が豊富なウクライナは、世界有数のハチミツ生産国として知られる。侵攻により地雷に汚染されなければ「存在するはずのなかった」ハチミツを作ることで、汚染に苦しむウクライナの現状を世界に伝えようと試みる。

 ウクライナ国防省などによると、2024年12月時点で、侵攻の影響によって国土の4分の1近くにあたる13万9千平方キロメートルにわたって地雷や不発弾が埋められており、アフガニスタンなどを抜き、世界最大の地雷汚染国となっている。ウクライナがロシアから一部地域を奪還したあとも、地雷の存在は農業再開の大きな妨げになっている。

 地雷除去には長い時間と多大な資金が必要とされる。米戦略国際問題研究所(CSIS)の分析によると、汚染された地域から完全に地雷を除去するために必要な期間は、資金や機材、人材の有無で数十年から数百年と幅があるという。

 今回のプロジェクトで作られたハチミツは、ウクライナ領内の地雷除去の重要性を、ウクライナを支援する国や国際社会にアピールするために活用されるといい、CSISは「汚染への対応や適応に向けた革新的なアプローチ」と評している。

共有