人形浄瑠璃文楽・人形遣いの桐竹勘十郎さん
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 歌舞伎や人形浄瑠璃文楽の公演や人材育成の拠点である国立劇場(東京都千代田区)の再整備が進まず、担い手からも不安の声が上がっている。現在の建物は昨年10月に閉場したが、新劇場の開場は見通しがつかないまま。現在、代わりとなる劇場での公演を続ける文楽の現状について、人間国宝の人形遣い、桐竹勘十郎さんに聞いた。

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 国立劇場の小劇場は1966年の開場以来、人形浄瑠璃文楽の「東の本拠地」でした。開場翌年、14歳で入門した私は師匠(吉田簑助)に連れられて初めて行きましたが、本当に立派でした。みんなも「素晴らしい劇場や」と喜んでいましたね。

 当時の文楽公演は、長い作品の有名な場面だけを上演する「みどり」が主流でした。しかし国立劇場は当初から現在まで、場面を割愛せず筋を通して上演する「通し狂言」を重んじる方針をとってきました。

 初めの頃は今より人形遣いの人数が少なく、通し狂言の時は食事をする暇もないほどでしたが、演じているうちに「この筋は、こうなるのか」「この場面を上演すると、次の場面がよく分かるなあ」と、それまで分からなかったことがどんどん見えてきて、本当に勉強になりました。通し狂言を上演出来ることは、文楽にとって一番大事なことだと、今は思います。

「自分の気持ちがほどけてしまわないように」

 また、文楽で浄瑠璃(義太夫…

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