早稲田大学演劇博物館館長、児玉竜一さん
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 昨年10月に閉場した国立劇場(東京都千代田区)の再整備が、半年以上たったいまも始まっていません。歌舞伎、文楽、日本舞踊などの関係者からは、不安と批判の声が上がっています。

 国立劇場とはどんな役割を担い、その「不在」は日本の文化にどんな影響を及ぼすのでしょう。歌舞伎・文楽研究が専門の早稲田大学教授で同大学演劇博物館の館長も務める児玉竜一さんに聞きました。

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 国立劇場がない期間が長引くことを、心配しています。

 1966年にできたいまの建物の老朽化に対応するため、2014年に発表された最初の計画は、17年から大規模改修をし、20年に再開場するというものでした。それが東京オリンピックの影響で4年延期され、その間に、民間資金を導入するPFI方式で建て替えをして、ホテルや商業施設などと組み合わせた観光拠点にするプランに変更されました。しかし、入札を2度しても引き受ける企業は決まらず、29年度と発表されている再開場が見通せなくなっています。

 国立劇場の「不在」が長引くのは深刻な問題です。劇場が担う役割が大きいからです。

 文化財保護制度のもと、無形文化財に指定されている芸能の伝承と保存に、国は責任を持っています。国立劇場はその拠点です。

 日本では、平安時代に完成した雅楽、中世に大成した能・狂言、江戸時代にできた歌舞伎、文楽と、各時代を体現する芸能が、それぞれ独立性を保ちながら並行して現代に伝わっています。どう演じるかという身体技法とともに継承されており、これが世界的に見ても非常に珍しく、日本の芸能の貴重な特色になっています。

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