政府が18日に閣議決定した新しいエネルギー基本計画(エネ基)は、再生可能エネルギーの活用を掲げつつ、同じ「脱炭素」を旗印に、原発の建て替え(リプレース)も促す内容だ。原発回帰は大手電力が切望していたとはいえ、政府の支援策がなければ投資に踏み込めない事情も浮かぶ。

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九州電力の川内原発。右から1号機、2号機=2023年11月1日、鹿児島県薩摩川内市、朝日新聞社ヘリから、吉本美奈子撮影
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 「今後、原子力が重要になるのは間違いない」

 九州電力の池辺和弘社長は1月の会見で、こう強調した。昨年末に経済産業省の有識者会議がまとめた新しいエネ基の素案は、東日本大震災後に掲げてきた「原発依存度を可能な限り低減する」との文言を削り、原発の建設を事実上縛っていた「くびき」を外した。池辺氏は「新設も含めて進めていくべきだ」とも語った。

 新しいエネ基では、老朽原発を廃炉にした分だけ、別の原発でも原子炉を増やせるとした。九電は玄海原発(佐賀県)の2基を廃炉中だ。経産省は、その分を川内原発(鹿児島県)の「増設」に充てたい考えだ。

 関連業界も動き始めた。原発メーカーの三菱重工業は、2026年度までに本体の原子力事業の人員を昨年4月比で1割増やす方針だ。今後3年間の生産設備と研究開発への投資額も、前の3年間に比べて3割増やす。泉沢清次社長は「関心を持つ学生が多く、新卒採用はほぼ計画通り」と話す。東芝も原発の設計などにあたる専門人材について、今年度の採用を前年度に比べて増やす。業界では廃炉に関わる人材は確保してきたが、建設に向けた機運が盛り上がりつつある。

 ただ、事態はすぐに動きそうにない。原発の建設について、九電のある幹部は「うちがやるのは、あちら(関西電力)がやったあとだ」とし、当面は様子見の構えだ。

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