次世代のエネルギーとして注目される水素だが、脱炭素に本当に貢献できるのか。製造、使用、供給のそれぞれの場面で課題がある上、普及には既存の燃料との価格差を抑えられるかが肝となる。
水素の製造で重要なのは、二酸化炭素(CO2)を出さないようにすることだ。せっかく燃焼時にCO2が出なくても、製造過程で出てしまえば脱炭素の効果は薄くなる。
このため、水素の中でも製造過程でどれほどCO2を排出するかなどによって、グリーンやグレーなどの色の呼称をつけて区別する。水素自体は無色透明だが、便宜上広く使われている。
例えば、太陽光や風力発電のような再生可能エネルギーで、水を電気分解してつくる水素はCO2を出さず、「グリーン水素」と呼ばれる。水に電圧をかけて、陰極に水素、陽極に酸素を発生させる。
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世界にあふれるグレー水素、日本も抜け穴
化石燃料の天然ガスなどをベースにしてつくる水素は「グレー水素」だ。天然ガスに含まれるメタンと水蒸気を高温で反応させるなどして、水素を生み出す。「改質法」と呼ばれ、製造時にCO2も発生する。
ほかにも製造過程はグレー水素と同じだが、生じたCO2を回収・貯留する「CCS」という技術などを組み合わせた水素は「ブルー水素」という。原子力発電由来は「イエロー水素」や「ピンク水素」と呼ばれる。
ただ、国際エネルギー機関(IEA)の報告書によると、2021年に世界で生産された水素のうち9割以上がグレー水素などの化石燃料由来のものだった。現状では最も安価なことなどを背景に、CO2を出すグレー水素が最も普及している。
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の元職員で、シンクタンク「ゼロボード総研」所長の待場智雄さんは「単に水素を普及させればよいわけではない。今は移行期ではあるが、どれだけ早くグリーン水素を広めることができるかが重要だ」と話す。
日本も水素1キロあたりのCO2量が3.4キロ以下なら「低炭素水素」だとして使っている。だが、これは化石燃料由来のグレー水素が残り続ける余地がある。
水素を使うべき「hard to abate」とは
また、まだ豊富ではない水素…