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私が私であるために ベルギーの精神医療改革

私が私であるために~ベルギーの精神医療改革①

日本と同じように、精神科医療を多くの民間病院が支えているベルギー。「本人中心」の理念をもとに地域医療へと軸足を移し、長期の入院を減らそうとしています。どんな取り組みなのでしょうか。日本の医療・福祉分野の関係者とともに昨年10月、現地を訪ねました。

 「入院治療だけで精神疾患のある人が回復するのは難しい。本人が暮らす場に私たちが出向き、何が必要かを一緒に考えて生活全体を支えることが人生を取り戻すことにつながる。薬の処方もしますが、訪問中はとにかく対話が大切だと実感しています」

 ベルギー・アントワープにある総合病院「ザス カディックス」の医長で精神科医のビッキー・マタイセンさんはこう語る。

 マタイセンさんは、退院後に地域で暮らす人たちを精神科医、看護師、ソーシャルワーカーら多職種の専門家が訪問する「モバイルチーム」の一員としても働いている。

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インタビューに答える精神科医のビッキー・マタイセンさん(左)=ベルギー・アントワープ、森本美紀撮影
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ビッキー・マタイセンさんが勤める総合病院の精神科の一室。患者への対応などについて医師に質問する視察団のメンバーら=2024年10月8日、ベルギー・アントワープ、森本美紀撮影

 チームは、本人が望む医療や暮らしに必要な支援を提供する。就労や家事支援など必要とされる様々なサービスにつなげる役割も担う。

多職種でつくる「モバイルチーム」

 モバイルチームの仕組みは、ベルギー政府が精神医療改革の要として導入した。

 本格的に改革に取り組み始め…

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