今から10年余り前、茨城県つくば市に住む女性(52)は小学5年生だった知的障害がある長男を見て、驚いた。コンビニで成人向け雑誌を立ち読みしているのを見つけたからだ。
「やめなさい」。とっさに叱ってしまった。
- 障害あっても「人生は自分で決める」 一方、性には「二重の差別」も
障害がある子どもの、性の悩みに対応できる相談窓口は広がっていない現状があります。記事後半では、家庭や個人ではどのように対応したらいいのか、特別支援学級教諭の話から考えます。
その後、特別支援学校の保護者会でこの話を切り出した。その場では誰も口を開かなかったが、玄関を出ると「実はうちも」と保護者が次々に語り出した。
「息子がリビングでうつぶせのまま腰を振って射精していた」「娘が性器を触った後、汚れた手を不思議そうに見ていたが、どうしていいか分からなかった」。みんな、相談できずに抱え込んでいたと知った。
共有することで気持ちが楽になり、「障害があっても性に関心を持つことは当然だと思えるようになった」。学校に相談すると、自慰行為などについて個別に教えたと連絡があったという。
一方、障害がある子どもと性について周囲に打ち明けられず、孤立を深めてしまう例もある。
仙台市の女性(44)が次男の「性への目覚め」を感じたのは今から数年前、小学校高学年の頃だった。次男には、知的障害と自閉症がある。
アダルト動画を見て、女性の前でも気にせず自慰行為を始めた。次男は中学生になり、性への関心は一層強くなっていると感じる。
気になる女性を見かけると、至近距離まで近づいてしまう。女性の知人に股間を押し当てて腰を振ることもある。学校に次男への性教育を依頼したが、かなわなかった。
「このまま大人になってしまったらどうしよう、って」。女性は涙をぬぐった。
学校現場に見る、「性の学び」のニーズ
関西の特別支援学校で約30年間教える女性教諭(53)は知的障害がある人を、性への関心から遠ざけるのではなく「科学的な学びが必要」だと感じているという。
女性によると、性行動が特に多いのは、二次性徴を迎える小学校高学年から中学生。人前で自慰行為をしてしまったり、「体が壊れる」と泣き叫んだり。教室で生理用ナプキンをはがして血だらけになってしまう子どももいたという。
ある男子児童は、小学4年の…