金沢21世紀美術館=中道淳/ナカサアンドパートナーズ撮影、同館提供

 開館20年を迎えた金沢21世紀美術館(金沢市)は、年間100万人以上が訪れる人気の観光スポットだ。2021年から館長を務める長谷川祐子氏は、開館準備段階から学芸課長として、同館の建築や収蔵品の方針などに携わった。今年度で退任する同氏にこれまでの取り組みを聞いた。

 ――館内の至る所で写真を撮る来館者が見られます。写真映えする美術館を作られた経緯は。

 ガラス張りで壁面が丸い。壁も白く全面がレフ板みたいなので、光が回ってとてもきれいに写真が撮れる。スタジオのような役割を果たしています。

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 なぜそういうものを作ったかというと、今までの美術館に対し、反省点があった。照明の暗い美術館に長くいると、気持ちが落ち込んできたり、子供が泣き始めたりした経験がある。

 おいっ子をスター・ウォーズ展に連れて行った際、途中で暗くて嫌だと言って、窓のところに行きたいと言って泣き始めた。スター・ウォーズの魅力もその恐怖に勝てなかった。出入り口に出るのも大変です。

 作品を守り、お客さんを流し、効率よく見せる、作品本位の美術館の考えなんですよね。でも、そうでないものにしました。お客さん自身がきれいに見えて、長く滞在したくなる居心地のよさをどうやって作るかをまず検討したんです。

 現代アートは作家が生きていることもあって、撮影許可を取りやすい。購入時や展覧会前に前提にする。そうすると「カタログが売れない」という声がありますが、それぐらいで売れなくなるカタログだったらしょうがないです。

東京では壁だけで3千万円

 ――開館準備中、市役所側との調整で大変だったことは。

 「自然光を入れるのはとんで…

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