茨城県の鹿島港から東に約30キロの沖合で6日未明、大津漁協(同県北茨城市)所属の第8大浜丸(80トン)が転覆し、2人が死亡、3人が行方不明になっている事故で、亡くなった2人らを救助した、同漁協の第11不動丸の漁労長(船頭)の大熊和也さん(54)が朝日新聞の取材に応じた。
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大熊さんらによると、船は5日正午ごろに大津漁港を出発。
「助けてくれ」 転覆船からのSOS
今年初めての漁だったので、安全を祈願して、出港した船で出初め式をした。銚子沖へ南下し、別の2隻と船団を組んで漁をしていた。
異変に気づいたのは、午前2時ごろだった。
「助けてくれ」。第8大浜丸から大熊さんの船に、こう無線が入ったという。
転覆当時、周辺には15隻ほどいてイワシ漁をしていた。
水深は200メートルほどとみられる。大熊さんの船に海に落ちた3人を引き揚げたものの、うち2人は意識がなく、口から泡を吹いていた。みるみる顔色が悪くなり、30分ほど心臓マッサージを行ったり、自動体外式除細動器(AED)を使ったが、助からなかったという。
事故当時、海は荒れてはいなかった。ただ「『今日は魚が重いな』、とみんなで話していた」と大熊さんは振り返った。「救助に向かう途中で、第8大浜丸のバランスを取るために探索船とつないでいた綱が切れた、と聞いた。魚の重さや潮の問題など色々な要素が重なったのではないか」
また、「(通常は)魚が入りすぎて危ないときには網を切って魚を逃がしたり、網が破れたりするが、今回は網を切る時間がなかったんだろう」と推察した。
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大熊さんは、行方不明になっているうちのひとり、40代男性とも知り合いだった。男性は、船が沈む直前にも大熊さんと無線のやりとりをしていた。
男性は、この日の1回目の漁では魚が網にかかりきらなかったため、「2回目をやろうと思う」と話していたという。
男性は第8大浜丸の船頭をしていて、沈んだ船の中に閉じ込められたとみられる。「若くて将来もあるのに。早く見つかってほしい」と涙ぐんだ。