20年ぶりに発行される新紙幣。肖像に描かれるのは渋沢栄一、津田梅子、北里柴三郎

 20年ぶりとなる新紙幣が3日、発行される。1万円札の肖像は「資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一(1840~1931)。1984年に聖徳太子の後継に福沢諭吉が登場して以来、約40年ぶりの変更だ。5千円札は津田塾大学を創設した津田梅子(1864~1929)、千円札は血清療法を確立した北里柴三郎(1853~1931)になる。それぞれの横顔を紹介する。

渋沢栄一、設立に関わった企業は約500社

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新1万円札の表面

 渋沢栄一の生涯と業績を伝える渋沢史料館(東京都北区)には今、多くの若者が訪れている。特にこの春は、前年の2倍の多さという。

 きっかけは、2019年4月に新1万円札の肖像に採用されることが決まったことだ。さらに、21年にはNHK大河ドラマで、渋沢が主人公の「青天を衝(つ)け」が放映された。知名度は一気に上がった。

 聖徳太子、福沢諭吉に次ぐ3代目の1万円札の「顔」になった効果は大きい。だが、史料館で長年、渋沢研究に取り組む井上潤さん(64)は、それにとどまらない魅力があると話す。「渋沢は世の中に閉塞(へいそく)感がある時代に注目されてきた。今も、正しい道筋として渋沢が求められている」

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日本国際児童親善会の会長を務めたころの渋沢栄一。日米の民間交流に努めた=渋沢史料館提供

 渋沢は1840年、武蔵国血洗島村(現在の埼玉県深谷市)に生まれた。家業は農家で、染め物の原料となる藍を栽培。13歳で藍の買い付けを担い、商人の才覚を身につける。儒教の「論語」「中庸」といった書物にも親しんだ。

 時は幕末で、尊皇攘夷(じょ…

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