(3日、愛知県高校優勝野球大会決勝 享栄3―2中京大中京)
両チーム無得点のまま迎えた四回表1死二、三塁。杉本純也主将(3年)が打席に立つと、スクイズのサインが出た。
「なんとか前に転がしたい」。2球目のスライダー。手前でバウンドしたボールにバットをあてた。ピッチャー前へ転がすと、犠打野選となり1点を先制した。
バント練習は、日頃から徹底してきた。部員同士で「絶対一発で決めろ」とプレッシャーをかけ合い、杉本主将が「練習の方が試合より緊張する」と感じるほどだ。
「バントは得意なんです」。試合後、照れたように笑った。
九回表には勝ち越しにつながる中前安打を放ち、決勝点のホームを踏んだ。
「自分は技術がない。でも、練習は好き」と語る杉本主将。年長から野球を始め、いつしか虜になった。中学生のころ、大藤敏行監督に「(中京大)中京を倒す側に乗らないか」と誘われ、享栄への入学を決めた。
その大藤監督はチームを率いる杉本主将を「人柄だけの男」と評する。
同時に、大一番での活躍をこうも振り返った。
「杉本は一切、手を抜かない。神様が打たせてくれたんじゃないか」
杉本主将は「東海大会でてっぺん取って、夏は甲子園に行きたい」と語った。(渡辺杏果)