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東京都目黒区の自由が丘駅前にある老舗書店が今月20日に閉店する。
1923年創業の「不二屋書店」。
今年1月8日、閉店を知らせる貼り紙を店頭に掲示すると売り上げは急増。昔からのなじみ客は「あるのが当たり前だと思っていたから寂しい」と残念がる。3代目社長の門坂直美さん(74)は感謝しつつも「あって当たり前のものなんて無い」という。ここ数年の売り上げはピーク時の半分ほどで「その場その場でどれだけ努力してきたか。もうこれ以上はできない」と昨夏に閉店を決意した。
同書店は門坂さんの祖父の吟一郎さんが世田谷区奥沢で開き、29年に東急東横線の九品仏駅が自由ケ丘駅(66年に「自由が丘」)に改称される際に移転してきた。
駅の目の前にあったという店舗は東京大空襲で焼け、駅前ロータリーの整備とともに現在の場所へ。両親の苦労を見て「決して継ぐまい」と思っていたが40歳で勤めていた国内航空会社の客室乗務員を辞めて引き継いだ。レジの横の一等地に児童書の棚を設けるなど「街の書店は文化拠点でもある」という誇りを守り続けた。
孫に贈る本の相談に乗り後日、その女性が「孫が喜んでくれて」と笑顔で報告に来たり、お年玉を握りしめた子どもたちのために正月2日から店を開けたりと、門坂さんが楽しく振り返るのはお客さんとの交流のエピソードだ。駅前にあるため道を尋ねる人も多く「交番代わりね」と笑う。
閉店前最後の日曜日となった…