夢に向かっていると、分かれ道がある。壁にもぶつかる。そんな時は家族や友だち、先生に相談し、進む道をよく考え、壁を乗り越えよう。あきらめなければ、きっとできる――。「世界一美しい形(かた)」と称賛された空手女子の元世界王者は、子どもたちに語りかけた。
「みんな、夢、もってますか?」「はいっ!」
運動着姿の小学6年生の返事が教室に響いた。約55人の児童と向き合うのは、道着姿の宇佐美里香さん(38)だ。
「私はおばあちゃんが看護師だったから、6年生のころは看護師がいいなあと思ってた。でも、好きなのは空手でした」
宇佐美さんは東京都葛飾区で生まれ育った。空手を始めたのは小学5年の時。カンフーがモチーフのテレビドラマで、主演の安達祐実さんが悪人をやっつけていた。「たたかうシーンが格好良かった」。4歳上の兄を追い、道場に通い始めた。
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空手は沖縄発祥の武道で、世界中に1億人を超える愛好者がいると言われる。宇佐美さんによると、競技人口は世界で約6500万人。敵を想像して1人で演じる「形」と、2人が実際に対戦する「組手(くみて)」がある。
強豪の帝京高校から国士舘大学に進んだ。大学1年の時、監督に引き合わされたのが形の第一人者で、井上派糸東(しとう)流慶心会宗家の井上慶身(よしみ)さんだった。井上さんが指導する鳥取市の道場に東京から毎月1回、1週間ほど通った。「家族には負担をかけた。本当に感謝しています」
大学卒業後は鳥取市に移り住…