土井敏邦さんが取材を続けてきたガザの家族=土井さん撮影
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 イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃が続く中、パレスチナを30年以上取材してきたフリージャーナリストの土井敏邦さん(71)が「ガザからの報告」と題した映画と本を制作した。長年の取材でガザの人々の声を集めた土井さん。「一人ひとりの人生を見ずにガザの人たちの痛みを感じることはできない」と語る。

 土井さんは、イスラエルと将来的に独立したパレスチナ国家との共存をめざす「オスロ合意」が結ばれた1993年直後にパレスチナを訪問。それ以降ガザに何度も足を運び、難民キャンプの家族や町の人々らの声に耳を傾けてきた。

 昨年10月、イスラエルと、ガザで活動するイスラム組織ハマスの戦闘が始まった。土井さんは、ガザに住む知人の男性ジャーナリストと定期的に連絡を取り合い、現地で何が起きているかを伝えてもらってきた。

 収集されずにあふれかえるゴミ、避難先で広がる感染症、夜中に泣き叫ぶ子どもたち、病院の遺体から金品を盗む人たち……。

 自宅をイスラエルに砲撃され、弟を失ったジャーナリストは「ガザは終わった」と語ったという。

 新たに制作した映画と本「ガザからの報告」は、30年間映像に収めてきたガザの人々の姿や、昨年10月以降、そのジャーナリストから送られてきた画像や映像を元に構成されている。

 今回の映画や本では、ハマスが、ガザの住民にどう見られているのかについても焦点を当てた。

 ハマスの慈善活動や、人々の支持や不満の声、幹部へのインタビュー、今回の大規模攻撃以降の人々の心情の変化など、「マスメディアの報道ではほとんど伝えられないことを形にした」という。

 土井さんが30年以上の取材で心がけてきたのは、民衆に寄り添い、その人たちの姿を描くこと。

 「何人が死亡した、とニュースで見ても『かわいそう』で終わってしまう。でも、そこに住んでいるのが自分たちと同じ人間だと気づいたときに初めて想像力が働き、本当に何が起きているのかがわかる」と土井さん。

 「映像や本を通じて人々が何に苦しんでいるのか伝えたい」と話す。

 映画の上映会は7月6日午前10時10分から、日比谷図書文化館日比谷コンベンションホール=東京都千代田区=で、識者によるトーク付きで開かれる。参加費は2千円(学生1500円)。申し込み、問い合わせは土井敏邦パレスチナ・記録の会(doitoshikuni@mail.goo.ne.jp)へ。岩波ブックレット『ガザからの報告 現地で何が起きているのか』は7月5日発売。税込み693円。(甲斐江里子)

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