ナチスの強制収容所の一つ「テレジン」の悲劇を伝えてきた作家の野村路子さん(87)=埼玉県川越市在住=は今夏、ホロコーストを生き延びた友人とチェコで再会した。会うのはこれで最後になるかもしれない。覚悟の旅は、葛藤の多いものだった。
テレジンは第2次世界大戦中、ナチス・ドイツがアウシュビッツへの経由地として旧チェコスロバキアに設けた強制収容所だ。野村さんは1989年、プラハでテレジンの子どもたちが描いた絵に出合い、91年から日本で紹介する活動を続けている。ホロコーストの生還者らと交流を続け、イスラエルも繰り返し訪ねてきた。
それだけに、イスラム組織ハマスの急襲に対するイスラエルのガザ攻撃には、衝撃を受けた。すぐに知り合いにメールを送った。その一人がディタ・クラウスさん(95)。野村さんにテレジンやアウシュビッツの体験を語ってくれた友人だ。今も「語り部」として活動している。
子どもの命、共有できない?
安否を問う野村さんに対し、ディタさんからは〈プラハに滞在中だから心配はいらない〉と返事が届いた。
しかし、その後のやりとりは…