記者レビュー
ドラマの入り口となるのは、主役かもしれない。知名度や華やかさ、その演技力も問われよう。ただ作品の質を左右するのは、たしかな力のある脇役がどれだけいるかだろう。
6日に劇場版が公開されるドラマ「ドクターX」は、芸達者なバイプレーヤーたちが、その技量を競い合うような作品だった。
西田敏行が演じる、東帝大病院長・蛭間重勝。そして彼に逆らえぬ部下の「御意3兄弟」こと海老名敬(遠藤憲一)、加地秀樹(勝村政信)、原守(鈴木浩介)。彼らの存在こそが、作品を天才外科医・大門未知子(米倉涼子)の英雄譚(たん)にとどめず、組織人の悲哀をも描く厚みのある物語へと転化させた。
そのスピンオフが成り立つのも、豊かな脇役がいればこそ。先月30日に朝日系で放送されたドラマ「ドクターY」を見て、改めて思った。
10月に76歳で亡くなった西田も登場した。迫力とおかしみが同居する蛭間の魅力は、画面のなかでは、なお健在。無許可の縫合措置を行い、退学となった医学生の処分について、最終的に蛭間はある判断を下す。物語の筋だけを追えば、力業の結末にも映る。しかし西田が最後に見せた柔和な笑顔を目にすると、なぜだか納得させられてしまうのだった。見逃し配信は、TVerやTELASAで。