クリームチーズでつくった「チーズデザート」を開発した片山和子さん=神戸市中央区の六甲バター、滝沢美穂子撮影

 Q・B・Bベビーチーズで知られる六甲バター(神戸市)で近年、新しく開発した商品が急成長を遂げている。「スライス」や「6P」などの定番とともにチーズ売り場を彩る「チーズデザート」だ。フルーツなどの風味をまとったクリームチーズはまさにデザート。その誕生の陰には、スイーツ愛にあふれる開発者のめげない闘いがあった。

 六甲バター家庭用開発第二チームリーダーの片山和子さん(44)は、岐阜で過ごした学生時代のある日、コンビニでカップ入りのチーズケーキを買った。その味が濃くて衝撃だった。「なんておいしい!」。作り方を知りたくて、製造元の六甲バターに就職しようと考えた。

 最終面接のお題は「会社でやりたいこと」。家でチーズケーキを焼き、丸い型ごと神戸に持参した。その場で食べてもらう時間はなかったが、役員たちから「面白い子」という評価を勝ち取った。「置いて帰った型は入社の半年後に返してもらいました」

 デザート開発を担当して4年経ったころ、新商品提案会で「ニューヨークチーズケーキ63%」が採用された。ところが商品化の半年後、デザート事業は廃止に。工場の老朽化と競合品との価格競争を勘案した経営判断だった。

 「職を失った、辞めようかと思いました」。へこんでいると、工場長が声を掛けてくれた。「新しく工場を建てるのは難しいけど、今ある製造ラインを使うのなら」

 工場でつくる6Pチーズは、一つ一つが扇形でホールケーキを6等分した形に見えた。箱入りで形崩れの心配もない。これだ!

 それから空き時間にこっそり…

共有
Exit mobile version