「センス・オブ・ワンダー」の新訳を刊行した森田真生さん
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 米国の著作家レイチェル・カーソンの遺作「センス・オブ・ワンダー」の新訳が3月に出版された。カーソンは人間による環境破壊を糾弾し、世界的に環境保護運動が広がるきっかけをつくった。カーソンの死から60年。訳に挑戦した独立研究者の森田真生さん(38)は、いまカーソンの遺作を読む意義を説く。

 ある秋の夜、カーソンはめいの息子である幼いロジャーを、雨が降りしきり風が吹きすさぶ中、海辺に連れ出す。カニを探す夜の冒険に、2人は笑いながら、海との交わりを感じる……。

 「センス・オブ・ワンダー」は、カーソンとロジャーがこうした自然の神秘に触れる体験をつづったエッセーからなる。1964年の著者の死により未完に終わっている。今回刊行した筑摩書房によると、日本語新訳は上遠恵子氏の訳以来、約30年ぶりだという。

 海洋生物学者のカーソンは主著「沈黙の春」を62年に出版。合成殺虫剤といった化学物質が生態系を壊していることをデータをもって説き、鳥たちの鳴き声が聞こえない「沈黙の春」が来ることに警鐘を鳴らした。

 まだ環境破壊が十分に認識されていなかった時代に、人類の「暴力」を糾弾した先駆的な著作であり、環境問題の古典として世界中に影響を与え続けている。

「知ることは感じることにくらべて半分も重要ではない」

 カーソンの告発から60年以…

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