誉高野球部マネジャーの川鍋凛桜さん(中央)と、研究活動に参加した選手たち=2025年1月14日、愛知県犬山市の同部グラウンド、辻健治撮影

 昨年12月に開かれた「日本野球学会」の大会で、誉高校(愛知県小牧市)の野球部マネジャー・川鍋凛桜(りおん)さん(16)の研究発表が高校生の部で優秀賞を獲得した。テーマは「ゲッツーで試合を飾る タイムと捕球位置に着目して」。その狙いは。

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 日本野球学会は、野球の科学的な研究を促進するなどして、野球界の発展をめざしている。仙台市であった大会には、大学教授やプロ野球関係者、高校生など約320人が参加した。

 2年生の川鍋さんは、野球部でただ一人の女子マネジャーだ。昨年9月、副部長の原島聖忠教諭(30)に勧められ、学会に向けた研究に取り組むことにした。

 昨秋の愛知県大会は3回戦で敗れた。川鍋さんが気になったのはチームの守り。「スコアをつけていて、ゲッツー(併殺)がなかなかとれていないと思った。とにかくゲッツーをとってほしい」

 今の誉高は守備からリズムをつくるスタイルだ。チームが抱える課題を改善できればと、併殺の成功率を高めることをめざして研究を始めた。

 テーマは、二遊間へのゴロで併殺を効率よく完成させるためには、どうすればいいかに絞った。

 ベースを中心として1メートル間隔で目印をつけ、二塁手と遊撃手が捕球する位置や角度、二塁ベースからの距離に応じた適切な動きを探った。練習後の選手たちに協力してもらい、「捕球後に自分でベースを踏む」と「ベース近くの選手へ送球する」に分け、それぞれの動きをストップウォッチで計測した。

 1カ月半で約1500回分のデータを集めたという。普段の生活をしながら研究をまとめる期間は、「頭がパンクしそうだった」と川鍋さんは振り返る。ベースを踏むために移動する方向と送球先(一塁)の方向を踏まえ、遊撃手は「ベースから1~2メートルであれば自分で触塁する方が速い」、二塁手は「1メートルの場合のみ自分で触塁すべきである」などと結論づけた。

 原島教諭は「選手が気付かないようなところを川鍋が気付いたので『教えてあげてよ』と。ありがたかったし、勉強になりました」と話す。

 学会での発表は「ゲッツーとれないようじゃ無理か。ゲッツーはね、とっておかないと」と切り出した。人気アイドルの「構文」を盛り込み、聴衆をひきつけた。高校生の部の全24演題の中から優秀賞を獲得し、「びっくりした。自信はあったので楽しかった」。

 誉高は2019年夏以来2度目の甲子園出場をめざす。「打つためにはどうしたらいいか。バッティングも守備もバランス良くなればいい」と、川鍋さんは次の研究テーマを考えている。

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