イチローさんのユニホームを前にする米野球殿堂博物館のジョシュ・ラウィッチ館長
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 「彼は野球の歴史に情熱を持っている。そして、とても大切にして敬ってもいる。大リーガーの中では、貴重な存在だ」

 「日米野球交流史展」の記者発表のために来日していた米野球殿堂博物館のジョシュ・ラウィッチ館長は4月18日、マリナーズなどで活躍したイチローさんをそうたたえた。

 イチローさんは、大リーグでの19年で10年連続200安打を含む3089安打を積み重ねた。04年は262安打を放ち、大リーグのシーズン最多安打記録を樹立。日米通算4367安打を誇るヒットメーカーに対して、ラウィッチ館長は「彼の日米で記録した数字は優れたものしかない。信じられないキャリアを過ごした選手であることは間違いない」と、イチローさんが殿堂入りの候補にふさわしいと最大級の賛辞を送った。

 殿堂入りの候補者は原則として引退から5年が経過した元選手の中から選ばれ、全米野球記者協会所属の記者投票で殿堂入りが決まるが、イチローさんのアジア人初となる米野球殿堂入りは確実視されている。

 米野球殿堂博物館はニューヨークの都心部から300キロ以上離れたクーパーズタウンにある。イチローさんはそこへ現役時代から7回ほど訪れているという。

 野球の聖地である米野球殿堂博物館には年間25万人以上が来訪し、広大な敷地を1日かけて巡る。イチローさんも一般の観覧者にまじって丹念に展示物を見て回った。

 博物館の地下には展示されていない所蔵物が保管されている。その中に、イチローさんが更新する前の大リーグの年間最多安打記録保持者、ジョージ・シスラーさんのバットが収蔵されている。

 ラウィッチ館長は「イチローさんは白い手袋をはめて、シスラーさんのバットを手に取って『歴史がつながった』と、感慨深い表情でおっしゃられたと聞いています」「イチローさんは『自分がどういう記録を更新したか』ということに興味を抱いて来訪した。そういう姿勢でプレーしていたメジャーリーガーは希少」と話した。

 米野球殿堂入りを果たせば、博物館内の殿堂表彰者ギャラリーにレリーフが飾られる。イチローさんが名実ともに大リーグのレジェンドとなり、後世に語り継がれることになる。

 来年7月から米野球殿堂博物館で、「日米野球交流史」をテーマにした特別企画展が開かれる予定だ。企画展は「1905年に日本の野球チームとして初めてアメリカ遠征を行った早稲田大学野球部を含む、アメリカを巡った日本チームの歴史」「1907年に日本で初めて試合を行ったアメリカの野球チームをはじめ、1934年にベーブ・ルースが来日した球史に残る日米野球を含む、日本を巡ったアメリカチームの歴史」「ラリー・ドビー、ウォーレン・クロマティ、ランディ・バースをはじめとする、アメリカから海を渡り日本で活躍した選手たちにまつわる歴史」「1964年に日本人として初めてMLBでプレーしたマッシー村上をはじめとし、1995年の野茂英雄や、その後に続いた日本人選手たちの功績と歴史」の四つのカテゴリーで紹介される。

 ラウィッチ館長は「両国の野球ファンが興味を示してくれることを信じている。世界中の野球ファンに訴えかけられる展示になると思う」などと力を込める。この春、マリナーズのキャンプ地を訪ねて、イチローさんにも日米野球交流史企画展の趣旨を説明。「それはエキサイティングだね」と、お墨付きをもらったという。(福角元伸)

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