穂村弘さん

言葉季評 歌人 穂村弘さん

 自宅からバス停までの道が、小学生の通学路になっている。先日、すれ違いざまに、ランドセルを背負った子どもたちの会話が耳に飛び込んできた。

 「るー、るー、るー、ルッコラ!」

 「らー、らー、らー、ラッパー!」

 一瞬、「?」と思ったけど、「ああ、そうか」と気がついた。どうやら、2人はしりとりをやっていたらしい。通学路でしりとりなんて懐かしい。私にも覚えがある。この言葉遊びに、子どもは一度は熱中するものなのかもしれない。

 こんな短歌を思い出した。

 

しりとりに命かけてた小3の僕に衝撃与えしンジャメナ

         タカノリ・ニシダ

 

 「ンジャメナ」はアフリカのチャドという国の首都らしい。「ん」からもしりとりは復活できる。世界は広い、ということをたった一つの言葉から実感させられたのだろう。

 「ん」から始まる言葉といえ…

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