国立大学で、理工系学部を中心に入試に「女子枠」を設ける大学が約4割と急増している。導入済みの大学では女子学生が増えるなどの効果が生まれている一方、さらなる拡大には、入試の公平性の確保が課題になる。(高浜行人、上野創、北村有樹子)
- 大学入試の「女子枠」、国立の4割導入へ 背景に「偏り」への危機感
国立大入試の女子枠は、近年になって急拡大した。理工系学部などで性別の偏りが放置できないほど大きい実態が一部にあるからだ。
調査でも、女子枠の導入の理由について「女子学生の割合が10%未満と極めて少なく、学修上の多様性が十分確保されているとはいえない」(福井大)、「工学部は女子学生比率が14%と低迷していることから、その改善に向けて」(山梨大)といった記述があった。
今年3月、理学部と工学部で26年度入試から女子枠計39人分を設けると発表した京都大学。湊長博総長は記者会見で「日本全体として理工系に対する女性のアクセスを必ずしも十分に提供してこなかった。もともとあった段差を乗り越えないといけない」と述べた。
「社会に求められ、入学できるチャンスが増えたと感じた。元から行きたい学科だったけれど、女子枠があると知って背中を押された」。名古屋大工学部のエネルギー理工学科に今年4月、学校推薦型選抜の女子枠で入学した女性(18)は、そう話す。過去には学科に女性が1人ということもあったと聞き、「学びたいことがあっても、その状況では迷う。女子枠がある学科なら女の子が必ずいることになるから心強い」。
1年生42人中、女子学生は7人。班分けのある授業では女子1人になることが多く、「発言しやすくなるためにも、もっと増えてほしい」と願う。
男子学生から「女子枠なんてずるすぎる」と言われたことがあり、女子枠での入学者を下に見る人もいると感じる。「賛否はあると思うけれど、男性が圧倒的に多かったところへ新しい風、新しい考え方を入れようとする中で受かったんだから胸を張りたい。授業も出会う人も面白く、毎日が充実していて入学して本当に良かったと感じます」と話した。
明暗わかれた志願倍率
女子枠を導入した大学には、結果を評価する声と「期待ほどではなかった」という声がある。
24年春の入学者向けに計58人の女子枠を設けて注目された東京工業大では56人が合格し、志願倍率は1.9~6.9倍だった。一般選抜も含めた女性の「入学手続者」は前年より55人増えて164人。入学者の女性比率は10.7%から15.3%に上がった。
井村順一理事・副学長は取材…