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いとうせいこうさん

 日本全体の電気をどんな発電方法の組み合わせで生み出すのかといった、国のエネルギー政策の方向性を示す「エネルギー基本計画」の議論が進んでいます。計画は約3年ごとに見直され、今回作るのは第7次になります。エネルギーのあり方を考える上で大きな転換点となった東日本大震災から13年が経ちました。再生可能エネルギーを増やしたり、「可能な限り減らす」としていた原発の方針を改めたりすれば、私たちの社会やくらしにも影響がありそうです。

痛感する「揺り戻し」の動き

 経済や暮らしの基盤であり、国の将来に大きく影響するエネルギー政策。政府は今年、その骨格となるエネルギー基本計画を見直します。2011年の福島第一原発事故の後、福島を何度も訪れ、そこに住む人の声を聞いてきた、作家のいとうせいこうさん。今、痛感するという「バックラッシュ(揺り戻し)」に対し、独自の挑戦を試みています。

 ――東日本大震災前と比べて、エネルギーに対する認識の変化はありましたか。

 僕は東京の人間だから、福島の人たちに押し付けた原発のエネルギーを使っていたんだっていう気持ちです。僕も消費者の一人。

 昔はあの辺りに炭鉱が結構多かったそうでね。とにかく取って東京に送ってた。その後に原発が来て、みんなで働いて。東北の人からすると、自分たちはずっとこの役割だと。戦時中に外につくった植民地が内側に食い込んできたような思いがしました。それで国が豊かと言えるのかなって。

 じゃあ代替エネルギーが今あるかと言えば、完全なものはないかもしれない。でも、無理だ、仕方ないといって、一足飛びにまた「原発回帰」のように議論が昔に戻ってよいのか。もっとやれることがあるはずだし、もったいない。憤りも感じます。

 ――地域でのトラブルなど、近年は再生エネに後ろ向きな意見も目立ち、「原発回帰」の声も上がっています。どう感じていますか。

 僕はこの1、2年ぐらい、バックラッシュがすげえなと思っていますよ。特に太陽光が、すごく悪いものみたいに。

 僕が思うのは、日本全体で大きく考えないと。富山県はこのエネルギー、青森県は風力、もっと言えば八戸市は水力だとか。色々な地域にあったやり方をする。そうやってゾーンに分けてものを考えるようにした方がいいと思う。

 日本って結構でかい。村々でソリューション(解決策)を考えていくのが、日本はやりやすいのかなと思います。

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いとうせいこうさん=2024年7月22日午後、東京都墨田区、吉本美奈子撮影

サッカーもエネルギーもいろんなやり方

 ――いとうさんは、自分の名前をつけた太陽光発電所「いとうせいこう発電所」を福島に建てています。どういう狙いですか。

 太陽光も水力も地熱も、建設…

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