福岡県の北東部に位置する直方市の住宅街。6歳になる盲導犬のニックが、相浦和枝さん(54)に寄り添いながら自宅を出てきた。
相浦さんは3歳のころに網膜色素変性症を発症。徐々に視力を失い、いまの視覚は「光を少し感じるくらい」という。
「バス」。左手でハーネスを持つ相浦さんが指示を出すと、ニックは周囲の様子を確認しながら、バス停の方向にすたすたと歩いていく。
この日は平日の午後でもあり、車や歩行者は少ない。「ストレート」「レフト」という相浦さんの指示を聞きながら、車道を横切り、反対側の歩道を左へ。しばらく歩いてもう一度左折。緩やかな坂をのぼると、4、5分で最寄りのバス停に着いた。
相浦さんのもとにニックがやってきたのは、子育てが一段落した5年前だ。「それからはニックと24時間一緒」とほほえむ。
商店街にある仕事先のうどん店や、定期的に買い物で訪れる大型商業施設、週に1回パーソナリティーを務めるコミュニティーラジオのスタジオ。相浦さんが記憶している「地図」をもとにニックに指示を出し、目的の場所に向かう。
サポートのため特別な訓練、適性を見極めて盲導犬に
午前10時~午後3時、相浦…