哲学者の三木那由他さん
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 学校などで、ある2人が「さん」と「くん」で呼ばれたとき、今でも「さん」が女性、「くん」が男性と、決めてかかりそうになる。呼称が、単なる呼び方以上の「ジェンダー」分類の役割を担ってきたからだろうか。言語とコミュニケーションを研究する哲学者の三木那由他さんに聞いた。

女性が男性を「くん」呼び、想像できない時代

 山岸凉子さんの漫画「天人唐草」(1979)に、主人公の響子が小学校の同学年の男子を「矢部くん」と呼ぶと、厳格な父親に「女の子は相手をなになにさんといわなくてはいけない」「男子をくんづけで呼ぶのだけはやめなさい」と叱られる場面があります。

 男女差別が極端にあった時代に育った父親の感覚では、「くん」が優位な男性ジェンダーと密接に接合していて、娘が男性を「くん」呼びする事態は想像できなかったのでしょう。

 「さん」「くん」は、古くから幼稚園や小、中学校で使い分けされてきた呼称だと思います。

 実質は男女を区別する意味が…

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