大分県玖珠町立くす若草小中学校の小原(おはら)猛校長(55)が22日、宇佐市隣保館の人権講演会に講師として招かれた。不登校を経験した子どもたちと向き合う小原校長は、約40人の来場者に「対話」の大切さを説いた。

 堺市生まれで、別府市内の母子生活支援施設で幼少期を過ごした。小学校教諭などを経て、昨年4月、玖珠町に開校した「学びの多様化学校」の校長に就いた。開校時の自己紹介では「校長先生ではなく『たけしさん』と呼んでください」と語りかけた。

 子どもたちの個性に合わせて柔軟なカリキュラムが組めるのが特徴で、同様の学校としては九州初の小中一貫の義務教育学校だ。大分県中西部の山里に、町を挙げて先進的ともいえる学校が誕生したのは、学校現場の危機感が背景にあった。

 玖珠町では不登校の小中学生が2014年度に7人だったのが、22年度は47人まで増加。中学生は町全体に占める割合が11%と全国平均の5%を大きく上回る事態に。「いま川に流されている子どもに待ってくれとは言えない」と、町教育委員会は23年夏以降、急ピッチで開校準備を進めた。

 廃校となった小学校を活用。当初は小学生4人、中学生12人でスタートし、現在は小学生6人、中学生17人が在籍する。スクールバスで通う子どもたちに小原校長は笑顔で接する。

 「これまでの学校は、すべての子どもにとって通いやすい場所だったか」。学校ではこの「問い」にこだわってきたという。「一人ひとり」を主語に、「みんなが主役の学校」とした教育目標は全教職員でじっくり時間をかけて決めた。

 登校時間は午前9時半で、服装は自由。「対話」「野遊び」「探究」という新しい教科を設けている。対話の時間では、輪になってそれぞれが意見を伝え、自分と他者を理解する。野遊びでは豊かな自然に飛び出し、野菜づくりも体験。探究の「学校づくりプロジェクト」では、わくわくする空間にしようと、教室などのネーミングをした。

 昨年12月1日付で変更された現在の「くす若草小中学校」の校名も子どもたちがプロジェクトで提案した。町議会へ傍聴に行き「学校の名前を変える、決定のプロセスに参画させたかった。大人ってこうやって決めるんだと、実感できたのは大きな成果だと思う」と小原校長。

 子どもたちの平均出席率は75%前後という。保護者からは「子どもが『学校が楽しい』といつも言っている。『休みの日が来るのがイヤだ』というぐらい」といった声も届いている。

 開校からもうじき1年。小原校長は「子どもも大人も対話をしましょう、としつこく言っている。教員が会議などで集まる時、価値観の違いはその場で言おうと徹底している」と語った。

共有
Exit mobile version