喫茶店で。居酒屋で。電車内で。菊地涼太さん(29)は、友人と出かけるたびに隣の人に頭を下げる。

 「すみません。声が出てしまう障害で」

 9割5分の人は「大丈夫」と言ってくれる。でも、席を移られたり、「あっちに行け」と言われたりすることもある。

 1人で出かけるときは、口の中に水を含む。そうすれば声が出ず、のどを鳴らすだけで済むから。

 自分の意思に反して、大声を出したり体を動かしたりしてしまう発達障害の一つ「トゥレット症」がひどくなったのは、中学生のときだった。

 中学受験を経て、第1志望の私立中学に進学した。小学生のころから首をくるっと回す運動チックが出ていたが、中1の夏ぐらいからは、「あっ」「うっ」と声が出てしまう音声チックが出るようになった。

 自覚症状はなかった。友達が「菊地のまね~」といって、ふざけてスマホで撮影している姿を目にするまでは。

 2年生になると、「馬鹿」「死ね」といった挑発的な言葉や、ひわいな言葉が出る汚言症が出るようになった。

 さらに悩まされたのが自傷行為だった。舌の先に出来た口内炎が気になり歯でかみちぎってしまい、大声を出してしまう。痛くて食事も取れず、ストレスから口内炎が悪化し、さらに気になって、かみちぎり……。悪循環だった。

 そして3年生のとき、事件が起きた。

 周囲の乗客から笑われるのが…

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