麻雀(マージャン)のプロリーグ「Mリーグ」は今季最終日を迎えていた。
700人ほどのMリーグファンらが見守る閉幕式の壇上に、フェニックスの魚谷侑未(38)は立っていた。
「2年連続レギュラーシーズン敗退というのを重く受け止め、来季は全身全霊で取り組みたいと思っております」
いつもの閉幕式、いつもの決意表明。そのはずだった。
言い終わった魚谷が「ふう」と大きく息を吐き、唇をかむ。
1秒、2秒、3秒。
目を閉じて、話すのをやめた。
涙をこらえているのが遠目にも分かった。
客席からは「がんばれ! ゆーみん」と声が飛んだ。
1カ月後の6月10日午前10時、フェニックスは魚谷と東城りお(33)の今季限りでの契約満了を発表。チーム結成時のドラフト1位で、MVP獲得経験もあるリーグの象徴的存在がチームを去ることに、SNS上では戸惑うファンの声も多かった。
今ならあの涙の意味は分かる。
魚谷は「あの時すでに契約が難しいことは聞いていて、来季は9割ないと思っていました。でも、来季のことを言わないといけないのがつらかった」と振り返る。
でもそうだとしたら、分からないこともあった。
魚谷はこの後、何かを払いのけるように首を横に振り、覚悟を決めて、こう言葉を続けたからだ。
「セガサミーフェニックスは来季必ずシャーレに手が届くように、そして近藤誠一監督にシャーレを掲げてもらえるように、全力で頑張りたいと思っております。来シーズン、セガサミーフェニックスが羽ばたくのをぜひご期待ください」
なぜわざわざもう一度、来季の話をしたのだろう。
諦めない姿勢と、時に涙を流す素直さと。魚谷侑未とその麻雀は、多くの共感を呼んできた。Mリーガーとしての来季がなくなったことへの思い、そして近藤誠一との忘れられない二つの記憶ーー。
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魚谷の答えは明確だった…