鏡を見て自分かどうか判断できる魚がいる。協力しない仲間には罰を与える魚や、簡単な計算ができる魚もいる。そうした、知性を支える脳の基本的な構成自体は人間と大きく変わらないらしい――。

高い知性を持っているかもしれないダテハゼとニシキテッポウエビ(中央)=大阪公立大学提供

 近年、そんな研究結果が相次いで報告された。かつて考えられてきたよりもはるかに頭のいい可能性がある魚。どこまで「賢い」のだろうか。

 大阪公立大学の動物社会学研究室の幸田正典特任教授、安房田(あわた)智司教授らは、魚の知性に着目した生態研究を続けてきた。

 例えば、エビの掘った穴を隠れ家にするハゼがいる。従来はダテハゼがニシキテッポウエビの敵を警戒するかわりに、巣穴を提供してもらっていると考えられていた。

 しかし、「詳細に調査すると、利害関係は複雑で、高度な認知能力を駆使して関係を維持することがわかってきた」(安房田教授)という。

 エビとハゼが互いにエサを与え合うことや、ハゼが尾の振り方を変えることで、エビに敵の接近を知らせたり、巣の外に呼び出したりしている可能性を明らかにしたという。

 また、和歌山県から沖縄県にかけてなど、広く生息する魚「ホンソメワケベラ」が、鏡に映る姿を自分だと認識できることを発見。魚類としては世界初の研究成果だった。

鏡(右)に近づくホンソメワケベラ=大阪公立大学提供

 さらに、ライバルのスイスのチームにわずかに先を越されたものの、今年4月には、「魚もさぼると罰を受ける」という研究成果も発表した。

 使ったのは東アフリカのタン…

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