紫式部が主人公の2024年のNHK大河ドラマで、改めて脚光を浴びた「源氏物語」。作家で精神科医の帚木蓬生さんは、物語に魅了され、50年にわたり読み込んできた。登場人物の心の内を描く表現に迫ると、現代の私たちが学ぶことがたくさんあるという。
――昨秋、出版された「源氏物語のこころ」では、物語の中で紫式部が「心」のつく表現を多く使っていることを指摘しています
訳していて、「心の表現」がやたら多いと気が付き、徹底的に調べてやろうと思ったんです。全部調べて、数えました。300ほどありました。
――心情の表現の多様さは、どのように源氏物語を豊かなものにしているのでしょうか
はかなさ・気位の高さ、短い描写で印象深く
物語には主に25人の女性が出てきますが、一人として同じ印象は残さない。25人が本当にくっきりと、短い描写にしても読者の脳裏に残るような表現です。
六条御息所は気位が高いので…