東京都教委アンケートから
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 新人教員の離職に悩む東京都教育委員会が、学校現場のコミュニケーションを改善しようと、採用から3年目までの教員を対象にした大規模アンケートを実施した。5千人超の回答から浮かんだホンネとは――。

プライベート優先 過半数

  • 「教員に寄り添っていない」文科省の抗議に学校現場から反発の声も

 「仕事とプライベート、優先するならどちらですか?」。アンケートの中のそんな質問に、過半数の55.2%が「プライベート優先」と答えた。

「いつでも相談してください」って言っていたのに……

 また、「尊敬できない先輩や上司はどのような人だと思いますか?」の質問への答え(六つの選択肢のうち三つまで選択)で最も多かったのは、「後輩・部下を指導するときに感情的(高圧的)になる」(46.4%)。これに、「人によって態度を変える」(43.7%)、「相談しづらい雰囲気を常に出している」(43.0%)が続いた。小学校教員の回答で最も多かったのは「相談しづらい雰囲気を常に出している」、中学校、高校、特別支援学校では「感情的(高圧的)になる」だった。

 先輩や上司の言動で落ち込んだ、つらい思いをしたという経験が「ある」と答えたのは50.1%。自由記述では次のような声が集まった。

 「相談したときに『知らない』や『わからない』とすぐに言って、相談を打ち切られてしまうとき」(高校・1年目・20代)

 「今忙しいので(話しかけないでください)という言葉を言われたときは、傷ついた。いつでも相談しに来てくださいと言っていた人に言われたので、しんどかった」(高校・1年目・20代)

「指示がほとんどない」「気分で態度を変える」

 「生徒のいる前での叱責(しっせき)や、感情的な発言による指導を受けたことがあります」(特別支援・1年目・30代)

 「指示がほとんどなく、分からないなりに正しいと思う方法で取り組んでいた。一部できていることを報告していたが内容は確認してもらえなかった。仕事をかなり進めた後になってから、やり方が違うと注意され、最初からやり直した」(中学校・3年目・30代)

 「管理職が人によって態度を変えたり、高圧的な態度で人に接したりする場面をみたり、それらが自分の身に起こったりしてつらい思いをすることがある」(小学校・1年目・20代)

1年以内の離職者数、過去10年で最多

 「気分で態度を変える方がいて、学校全体が機嫌をうかがうような雰囲気になるときがあります。権力を持っている方ならなおさら、あたたかな雰囲気で関わって欲しいと思います」(小学校・1年目・20代)

 調査のきっかけは何だったのか。都教委は2023年度、臨床心理士らが学校を訪問し個別面談する事業を実施した。対象は、約2千人の公立小学校の新任教員全員と、面談を希望した公立小中学校の教職員約9千人。そこから、多くの教員が業務負担の重さと職場の人間関係に悩んでいる状況が浮かんできた。

 教員がいきいきと働ける職場にするには、どうすればよいのか。「1人や2人に聞いても実際どうかわからない。全員の生の声を聞きたい」。都教委はそう考え、昨年10月から11月まで、都内の公立小中高・特別支援学校に勤務する採用3年目までの教員全員に呼びかけ、無記名のオンラインアンケートで5280人から回答を得た。回答率は約60%だった。

記事後半では、「若手から相談を受けたときのダメな応じ方」の例を紹介。専門家へのインタビューも掲載しています。

 大規模アンケートに踏み切っ…

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