(13日、第106回全国高校野球選手権大会2回戦 霞ケ浦5―4智弁和歌山=延長十一回タイブレーク)
相手は「強打」で甲子園に名をとどろかせる智弁和歌山。八回裏、2者連続の本塁打で同点となり、阪神甲子園球場は盛り上がる応援で異様な熱気に包まれた。
誰もが、おじけ付きそうになる雰囲気。だが、救援のマウンドに立った背番号10の真仲唯歩(3年)に、焦りはなかった。
「後輩(先発した2年生の市村才樹)が苦しいときは、先輩がしっかり背中を見せてやる」。先頭打者にこそ二塁打を許したが、後続を三ゴロにしとめて追加点を許さず、相手に傾きかけた試合の流れを引き戻した。
茨城大会でも6試合中4試合で救援。5年ぶりの甲子園出場をかなえた立役者の1人だが、制球力の良さを高橋祐二監督に買われて投手を始めたのは、昨秋の新チームになってから。それまでは内野手で、投手経験はなかったという。
「ピンチでも物おじしない性格」。自身でそう言うように、九回以降、得点圏に走者を抱えても、相手打線に1安打も許さなかった。十一回表の攻撃では、2死一、三塁の好機で相手三塁手を強襲する内野安打を放ち、決勝点をもぎとった。
チームアンケートには、将来の夢を「消防士」と書く。霞ケ浦野球部OBで、投手だった4歳上の兄・唯斗さんが今就く仕事だ。
十一回裏、最後の打者をスライダーで遊ゴロにしとめ、マウンドで拳を空に突き上げた。「みんなで念願の校歌を甲子園で歌えた。本当に最高でした」。火消し役をしっかりと務め上げ、満面の笑みだった。(古庄暢)