電子処方箋の普及目標見直しを発表する福岡資麿厚生労働相=2025年1月22日、東京・霞が関、藤谷和広撮影

 国が今年3月までに、ほぼ全ての医療機関や薬局で運用をめざすとしていた「電子処方箋(せん)」の普及が進んでいない。医療機関での導入率は1割にも満たない状況で、福岡資麿厚生労働相は22日、目標を見直すと発表した。対応策を検討し、今年夏をめどに新たな目標を設定する。

 国が電子処方箋の運用をめざすのは、オンライン資格確認システムを導入している全ての医療機関や薬局。厚労省によると、1月12日時点で、医療機関では15万1742カ所、薬局では6万387カ所が対象になる。

 しかし、電子処方箋を導入している医療機関は病院で311カ所(3・9%)、医科診療所で8172カ所(9・9%)、歯科診療所で1010カ所(1・7%)にとどまる。薬局は3万8188カ所(63・2%)で、比較的導入が進んでいる。

 厚労省の担当者によると、目標を大幅に下回る導入率の低迷には、患者にとってメリットが見えづらく、医療機関側もニーズを感じていないことが背景にあるという。

 また、周辺の医療機関や薬局で導入が進まず「お見合い状態」になっていたり、導入にかかる費用やシステム改修に負担を感じていたりしていることも理由に挙げられている。

 電子処方箋は2023年1月から運用が始まった。厚労省は、データ上で過去の処方薬を直近まで確認できるため、悪影響が出る飲み合わせや重複を避けやすくなることが期待されるとしている。

 また、災害時に通院が困難になった場合でも、オンライン診療を合わせて活用することで、薬を受け取りやすくなるといったケースが確認されている。

 福岡厚労相は今月22日に開かれた省内の会議で、「要因を分析し、さらなる導入策の検討を進めたい」と述べた。

 電子処方箋をめぐっては、医師が処方した薬とは別の薬が薬局に伝わるトラブルが7件報告された。一部の医療機関や薬局で、薬につける番号のひもづけに誤りがあったことが原因で、厚労省は24年12月に一時、システムを停止。医療機関や薬局に点検を求めており、これまでに新たなトラブルは報告されていないという。厚労省は今後、ミスが起こりにくい仕組み作りについても検討するとしている。

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