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高村ゆかり(たかむら・ゆかり) 1964年生まれ。専門は国際法学・環境法学。環境省の中央環境審議会会長。温室効果ガスの削減目標を検討する環境省の審議会と、エネルギー基本計画を議論する経済産業省の審議会の両方で委員を務める。

インタビュー連載「電ゲン論」

 「脱炭素社会」の実現が叫ばれるいま、あらためて「電気」をどうつくるべきなのかが問われています。原発の賛否をはじめ、議論は百出しています。各界の著名人にインタビューし、さまざまな立場から語ってもらいました。

 省エネルギーの進展と人口減などで、将来的に減少すると見込まれていた電力需要ですが、国の検討会で今後右肩上がりになっていくとの推計が示されています。2023年度の需要は8026億キロワット時で、33年度には約4%増の8345億キロワット時になるとしており、過去の推計と比べると、32年度時点で約200億キロワット時増えています。大量の電力が必要なデータセンター(DC)や半導体工場が次々とできるためだとしています。

審議会で「よく検証を」と発言したわけ

 経済産業省は、人工知能(AI)の利用などでデータセンター(DC)が増えるとの見通しから、今後電力需要が増加すると予想しています。こうした推計をどう受け止め、対応するべきなのか。同省の審議会の委員を務める東京大学未来ビジョン研究センターの高村ゆかり教授に話を聞きました。

 ――審議会では、将来的に電力需要が増えるとの予測が示されましたが、高村さんは「よく精査を」と発言しました。なぜですか。

 DC増加は電力需要を増やす要因ですが、電力を大量に使えばコストも増えます。DC側もできるだけ需要を抑制する動機があります。例えば、再生可能エネルギ―が余っているところにDCを立地し、データ処理を行う。データ処理に使う電気の一部を光に置き換える「光電融合」という電力消費を抑える技術もあります。

 デジタル化の進展により、社会の効率化、エネルギー需要の抑制の効果も期待され、そうした効果も検討の必要があります。日本の場合は、人口減と高齢化が進むという電力需要を下げる要因もあります。

 ――電力需要が増えるという論調の背景に、原子力を推進したい思惑があるのでしょうか。

 思惑があるかはわかりませんが、新設・建て替え(リプレース)には十数年はかかります。当面の電力需要増への対応は難しい。一方、化石燃料を使う火力発電を安易に拡大して需要をまかなうのは、今後の脱炭素化の障壁にもなり、DC側の脱炭素電力へのニーズに応えるものではなくなります。

 まず電源を増やすという結論を持って議論をしてしまうと、電気代を負担する我々にとっては不幸だと思います。火力でも原子力でも新しい電源をつくるにはお金がかかる。実際は稼働しない、または稼働率が想定より大きく下回るとなると、発電事業者、ひいては電力需要家にコストがのしかかります。

 ――それでも電力需要に対応するなら、化石燃料や原子力と比べて、コストは再エネが最も安いとも言われています。どうみていますか。

新電源も稼働見通し甘ければコストに

 新設の設備の発電コストの観点からは、再エネが最も安いです。洋上風力もコストが下がってきています。

 他方で新設の原子力は高いで…

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