駒形克己さんは「泳ぐのをやめたら死んでしまうんだ」と口にしていた。病室にいるときも仕事に夢中だった=2014年撮影

 スタイリッシュなのに、素朴であたたかい。3月29日に70歳で亡くなった造本作家・デザイナー、駒形克己さんの絵本やデザインは国内外で愛された。作品の繊細さ、ぬくもりには、人柄が表れていた。

旅と出会いの人生

 〈ゆっくり ゆっくり かたちを変えながら 行き先は風まかせ〉〈あしたはあしたの雲になる〉

 代表作「雲ひとつ」は、白い紙と切り抜きで表現されるシンプルな絵本だ。雲の数が増えたり、大きくなったり。ページをめくるたびに、形が少しずつ変わっていく。

 長年の友人でもある絵本評論家・広松由希子さん(61)は「駒形さんの生き方を象徴しているような作品」と話す。「気の向くままに、自由に。旅と出会いを重ねながら、仕事をする人でした」

 作品の多くは、自身が立ち上げた出版社からの自費出版だった。繊細な仕掛けの絵本。コムデギャルソンのコレクション案内状のデザイン。30年近く続けた子供向けの創作ワークショップ。どの仕事でも新しい表現を探した。長女のあいさん(35)は「常々『やってみないとわからない』と言っていた」と振り返る。「仕事に大きいも小さいもないよ」とも。墨一色の刷り出しでも必ず現場で立ち会った。

■鉛筆で書いた「まだいきてる…

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