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近い将来、必ず阪神打線の中心を担う。ドラフト1位で2023年に入団した森下翔太は、球団関係者のみならず、私を含む担当記者からもそう見られていた。
プロ1年目は開幕戦スタメンに始まり、7月下旬からは3番打者を任され、球団では岡田彰布・前監督以来の新人右打者で2桁本塁打を放った。
その年の日本シリーズは計7打点で、シリーズ新人記録を塗り替えた。成績以上に、何か持っていると思わせる、打席に立つだけでこちらがワクワクするような選手だった。
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1年目のオフには日本代表「侍ジャパン」にも招集された。井端弘和監督は「どの試合も緊張なく、練習から普段通りの打撃や声出しがずっとあって、素晴らしい、頼もしいと見ていた」と評価する。
あれから1年余り。野球の国際大会「プレミア12」は全9試合で日本代表「侍ジャパン」の4番打者を任された。チームでも今季、藤川球児・新監督は4番の有力候補に位置づける。
ルーキーイヤーは打率2割3分7厘、10本塁打、41打点。昨季は打率2割7分5厘、16本塁打、73打点。成績は向上しているとはいえ、「想像していたより、若干届かなかった」と満足せず、オフの自主トレ期間は、打力向上に取り組んだ。特に強打者の宿命とも言える内角攻めに一層対応すべく、体の近くからバットが出てくるスイング軌道「インサイドアウト」を意識。打率3割、30本塁打、100打点を目標に据える。
腰の張りで12日から別メニューとなったが、それまでの春季キャンプでも、「同じことを、無意識にできるようになるまでやり続ける」。紅白戦で4番として安打を放っても一喜一憂しない。打撃練習の中でインサイドアウトやセンター返しなど課題を挙げながら、日々の状態を見つめ続けた。
日増しに高まる新しい4番としての期待。しかし、周囲の喧噪(けんそう)をよそに森下は泰然としている。
「今は自分のやるべきこと、やりたいことに目を向けられる時間。チームのことを考えるのは、オープン戦が始まってからぐらいでいい」
ぶれない芯の強さ。そして、それをはっきり言えるところに、成長を感じた。
阪神は今年、球団創設90周年。その打線の中心に座る打者は、「チームの核であり顔」と言い切る。打って勝てば神様、負ければ、その責任をすべて背負う。入団以来、大山悠輔をそばで見て、重圧は伝わってきた。
「性格的に、大山さんみたいにはなれないと思う。感情を表に出さず、内に秘めることは、自分はなかなかできない」
好機で打てずにベンチに戻って涙を流したり、打って感情を爆発させたりと天真らんまんな性格だ。たとえ4番を打つことになっても、そこは素直に出しつつ、「その後の行動をしっかりやっていきたい」。
プレッシャーに耐えるのではなく、楽しむ。そんな4番打者になりそうな気がする。