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衆院厚労委で答弁する加藤勝信厚労相=2018年5月

 2018年の働き方改革関連法案の国会審議の際、不動産大手の社員の過労自殺をめぐって当時厚生労働相だった加藤勝信氏(現財務相)がした答弁と、厚労省が開示した文書に矛盾があることがわかった。答弁は、野党から厳しい追及を受けていた問題に関するもので、説明責任が問われる。

 同法案には当初、労働時間の規制を緩める「裁量労働制」の対象業務の拡大が含まれており、野党から「長時間労働につながる」と批判を受けていた。

 これについて加藤氏は18年2月の国会で、裁量労働制を対象外の業務の社員に違法適用した野村不動産に対し、厚労省が17年12月25日に特別指導したことを例に挙げ、「しっかり監督している」と発言。対象業務を拡大しても問題ないと強調した。

 だが18年3月4日の朝日新聞の報道で、同社の男性社員が長時間労働で体調を崩して16年に自殺していたことが発覚。遺族による労災申請がきっかけで同社への調査が始まり、特別指導に至ったことが明らかになった。

 野党は、加藤氏がそうした事実を把握しながら、厚労省の独自調査で違法適用を見つけたかのような説明をしたのではないかと指摘。「事前に過労死を知っていたとすれば、法案を通すために都合の悪いことを隠していたことになる。政治的責任は免れない」と追及した。

 翌4月の国会で、労災認定を知った時期を問われた加藤氏は「(報道翌日の)3月5日に報告を受けた。それ以前は承知していなかった」と否定した。

 ところが、朝日新聞が同6月に情報公開請求し、訴訟を経て最終的に昨夏開示された文書には、加藤氏の答弁と矛盾する内容が含まれていた。

記事後半では、朝日新聞の情報公開請求に対して、厚労省が「答申やぶり」と呼ばれる異例の対応で文書を不開示にしたことや、そうした対応が加藤氏の意向だったとする元幹部の証言を紹介しています。

労災認定することを事前報告

 文書の題名は「野村不動産に…

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