研究イメージ図©Kanon Tanaka(https://www.kanontanaka-illustration-webdesign-science.com/)

 脳の右側が傷つけられると、左の手足がまひし、左側の脳が傷つくと右の手足が動きにくくなる。運動神経の指令が、左右の脳から延髄で交差して体の左右逆側に伝達されるためだ。ところが、けがからの回復時には、ふだんは機能していない左右の脳をつなぐ神経経路が働き、左脳→右脳→右手足、右脳→左脳→左手足と、運動にかかわらない側の脳が活性化されていると、京都大などの研究チームが動物実験で確かめた。

 研究成果が科学誌ネイチャーコミュニケーションズに発表された。脊髄損傷や脳梗塞でまひした患者の効果的なリハビリへの応用が期待される。

 脊髄損傷や脳梗塞で脳神経が傷つくと運動まひが生じる。一度損傷を受けた神経組織の再生は難しいため、リハビリによる運動機能の改善は、従来とは違う神経経路を代替させていると考えられているが、仕組みはよくわかっていなかった。

 研究チームは、脊髄損傷のニホンザルで、大脳の左右にある運動を制御する部位(運動前野)にウイルスを注入して遺伝子を操作。脳の傷ついた側から傷ついていない側への神経経路を一時的に遮断できるようにした。その上で、親指と人さし指でイモをうまくつかめるか指の運動機能や、脳活動を評価した。

 その結果、脊髄を損傷する前…

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