無数の糸を張り巡らせたインスタレーションで知られる現代美術家・塩田千春さんの個展「塩田千春 つながる私(アイ)」(朝日新聞社など主催)が、大阪中之島美術館(大阪市北区)で開催中だ。ベルリンを拠点に世界各地で展覧会を開いており、出身地・大阪での大規模個展は16年ぶり。新型コロナの世界的流行で揺らいだ「つながり」について、作品を通じて問い直している。
塩田千春(しおた・ちはる)
1972年大阪府生まれ、ベルリン在住。「不在の中の存在」をテーマにした大規模なインスタレーション作品を制作。2015年の第56回ベネチア・ビエンナーレで日本館の代表に。2019年に東京の森美術館で個展「魂がふるえる」を開催。
数え切れないほどの赤い糸が垂直に下がり、膨大な量の白い紙が渦を巻く。「つながる輪」(2024年)は、展覧会を象徴する作品だ。1500枚を超える紙には、「つながり」をテーマに募集したメッセージが記されている。
「その人の人生を読んでいるよう」
交通事故で亡くなった夫と成長した子どものこと、連れ添って30年になる妻のこと、長年暮らした家を引き払うことを家族で決めたこと。「まるで、その人の人生を読んでいるようだった。3日間かけてすべて読み、どの場所に配置するかを決めた」と塩田さんは話す。
「運命の赤い糸」という言葉が信じられてきたように、赤い糸には特別な意味がある。赤は血の色でもある。1枚1枚が鳥のようにもみえるメッセージを赤い糸でつないだ。「はじまりも終わりもない永遠に続く円環をこの場所に作りたかった」と作家は記す。
絵が描けなくなったことも
1972年生まれ。大阪府岸…