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警察庁が入る庁舎=2024年9月2日午後1時14分、東京都千代田区、板倉大地撮影

 警察に保護された人の容体が急変し、その後に死亡する事案がなくならない。保護の方法などは警察庁の要綱で定められているが、具体的なルールは都道府県警によってまちまちだ。急変にいち早く気づけるよう対策の強化を求める声もあり、警察庁は、全国の警察に異状を発見した際の救急要請の徹底を指示した。

保護室で転倒「もっと早く気づいてくれれば」

 福岡県田川市。2024年2月23日午後11時半ごろ、通行人から「駐車場で男性が寝込んでいる」と110番通報を受け、警察官が向かった。男性(当時53)は泥酔している様子だったため、県警田川署で保護することになった。

 同署の保護室に入ってから約4時間後、男性が嘔吐(おうと)しているのに署員が気づいた。男性は病院に救急搬送されたが、その後に死亡。死因は前頭部打撲による頭蓋内損傷だったという。

 捜査関係者によると、その後、男性が寝込んでいた現場周辺の防犯カメラを調べたところ、男性が後ろ向きに転倒していたことがわかった。また保護室の監視カメラには、入室後1時間で男性が頭をぶつける様子が2回記録されていたという。

 男性の友人は朝日新聞の取材に「もっと早く異変に気づいて搬送してくれれば助かったかもしれない」と話した。

 県警によると、保護室での対応のルールは署ごとに定められ、田川署では執務時間外は1時間に1回以上巡視することになっていた。県警は「適切に対応した」としている。

 保護した人が亡くなるケースは、23年12月に警視庁と岡山県警で、24年は4月に鹿児島県警、9月に福岡県警でもあった。福岡県警では今月9日にも、保護した男性がその後に容体が急変して死亡した。死因は病死だった。

 こういった死亡事案を受けて、警察庁の露木康浩長官は24年5月に都道府県警の生活安全部門の幹部を集めた会議で、「綿密かつ確実な動静監視の実施、適切な保護業務の推進に努めてほしい」と述べた。

 警察関係者によると、2023年に全国で27万5482人が保護された。19年と比べて約8千人多い。このうち、迷い子や負傷者などが7割近くを占め、2割超は酩酊(めいてい)者や泥酔者だったという。

「常時監視」「2時間に1回の見回り」 バラバラな運用

 福岡県内の繁華街近くにある警察署では、週末の夜は保護室が泥酔者らで満員になることも多いという。県警幹部は「夜中や未明に署で対応できる人員は限られており、きめ細かい対応には限界がある」と話す。

 警察庁が1960年に定めた…

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