認知症になっても自分らしく生きる――。国はそんな「新しい認知症観」を打ち出している。それは可能なのだろうか。京都市の下坂厚さん(51)は、5年前に若年性アルツハイマー型認知症と診断され、これまで当たり前と思っていた生き方が少しずつ困難になりつつもあるという。「人生の一部」である写真を通じて、自身や家族との記憶をつないでいく意味を語る。
――鮮魚店を友人と営んでいた2019年に若年性アルツハイマー型認知症と診断を受け、その後、デイサービスの職員として昨年まで勤務されていました。診断から5年、生活は変わりましたか。
「当たり前だと思っていた生き方が難しくなっていき、できなくなることが増えました。出かけた先でどこにいるのかわからなくなることもあります。地図アプリや、電車を乗り継ぐ時もネットで検索しながら、なんとかなっています。少し前のことが思い出せないなど、短期記憶が失われている感覚もあります。以前は映画やドラマが好きでしたが、話の筋の理解や集中が難しくなって、あまり見なくなりました。仕方がないことと受け入れるまでには時間はかかります。でも、今もできること、大事にしたいことを軸に生きたいと思い、少しずつ気持ちを整理しています。認知症への偏見やイメージが変わるように、これから認知症と診断される人もいると思うので、その時につらい思いをする人が減っていくようにと、現在は、認知症についての啓発を中心に活動しています」
- 【関連記事】「もういいよ」諦めた母が歌った 認知症でも「私であり続ける」とは
――大事なこととは。
「写真が僕の人生の一部です…