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「ドラクエⅢ」リメイク版のプレー中の画面。三木那由他さんは主人公を「ルックスB」で「なゆた」という名前でプレーしている=三木さん提供

Re:Ron連載「ことばをほどく」(第11回)

 2024年11月14日、とうとう待ち望んでいた日が訪れた。

 そう、「ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ…」(スクウェア・エニックス)のリメイク版の発売日である。もともとが1988年発売のファミリーコンピュータのゲームなので、1985年生まれの私とほぼ同世代だと考えると、なんだか感慨深いものがある。私はこの日のために「ドラゴンクエスト」(ドラクエ)シリーズをⅠ、Ⅱ、Ⅳ、Ⅴ、Ⅵ、Ⅶ、Ⅷと、これまでにやったことあるものもないものも含めてまとめて一気にプレーし、この「ドラクエⅢ」に備えてきたのだった。

 それから約1カ月が経ち、無事「ドラクエⅢ」の冒険を一通り終えることができた。いや、「ドラクエ」シリーズは冒険が終わったあとにさらにやり込み要素が続くのが恒例で、それは手を付けられていないのだが。ともあれ、世界に暗闇をもたらしていた恐ろしい大魔王を倒し、勇者「なゆた」は無事に光を取り戻したのだった(私は主人公に自分の名前を付けてプレーするタイプだ)。

 さて、このリメイク版だが、発売前に大きく話題になった要素がある。性別に変えて「ルックスA」「ルックスB」という表記を導入したことだ。「ドラクエ」シリーズで主人公の設定をプレーヤーが自由に決められる作品は多くないが、88年の「ドラクエⅢ」ではもともと主人公や仲間たちの性別を決めることができるようになっていた。それによって物語が大きく変わるわけではないが、身につけられる武器や防具だとか、性格だとかに多少の差が出るようになっていた。それだけのこととはいえ、この手のゲームをする人間にとって武器や防具の違いはかなり重要な問題で、「ドラクエⅢ」が話題になる際には性別について言及されることも多かった。それがなくなったというので、少なからぬファンがSNSなどで話題にしていたのだった。私自身もこの件で朝日新聞の取材を受け、この変更に肯定的なコメントをしていた。

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 「ルックスA」と「ルックスB」に分かれているとはいえ、見たところ「ルックスA」は要するに従来だと「男性」と呼ばれていた外見に対応し、「ルックスB」は「女性」とされていたものに対応しているのは明らかだった。それゆえ、この言い換えに意味はないと見るファンも多かったと思う。私も実際に「ドラクエⅢ」をプレーしていて、「今後の作品ではさらに工夫を加える余地があるかもしれない」と感じた。今回は、「ドラクエⅢ」におけるこうした言い換えを出発点に、「言葉を置き換えることに意味はあるのか?」、あるいは「言葉を置き換えることが有意味になるにはどうしたらいいのか?」を言語哲学的な観点から考えてみたい。

差別的な表現をブロックできるのか

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