谷川俊太郎さんの作品を口ずさみ、思い出を語る角野栄子さん=2024年12月11日、神奈川県鎌倉市、伊藤宏樹撮影

 「ことばあそびうた」(福音館書店)にある谷川俊太郎さんの詩「だって」を読むと、小学校に入るか入らないかのころを思い出すんです。小さいころ、自分をほめてほしくて自己主張をするときによく使った言葉なのね。

 11月に亡くなった詩人、谷川俊太郎さん。20代の頃から親交のあった児童文学作家の角野栄子さんに谷川さんの言葉について聞きました。

 ぶったって けったって いててのてって いったって

 たってたって つったってたって つったって ないてたって   (「だって」より)

 谷川さんのうまいところは一つのことから始まって、どんどん言葉が重なっていくでしょ。同じ言葉をちょっとずつ変えながら使って、どんどんエネルギーが増していく。それって、すごいなって思うの。小説だったら長い説明とか描写とかをずっと書いて初めてエネルギーが出てくるんだけど、谷川さんの詩は、音の響きとリズム感でそれができていくっていうのが面白い。

 私の父は下町育ちの江戸っ子で、言葉がリズミカルでした。今思えばね、父の言葉は面白かった。落語とか浪花節、浄瑠璃、歌舞伎とかのエッセンスが父の言葉の中にあった。「オノマトペ」がいっぱいあった。

 父と廊下ですれ違うと、私の…

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